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2024年3月10日(日)

  • 建築さんぽ

ワンチャンス ―モンゴル土産―

前述した「川渡り」だが、水嵩の増している二か所を渡らなければどうしても目的地まで行けない行程だった日、二時間ほど様子を見たが川渡りは中止になった。一か所を渡り切った他の車がもう二か所めを渡る中州で立ち往生して次に渡れていない状況だったからだ。そして乗馬タイムに変更したのだった。馬で登れるほどの低山が幾重にも連なる場所で、野の花がどこまでも続きゲルが点在して360度が美しい。往復して馬主宅に間もなく辿り着く数十メートルまで来た時に、乗っている馬の足元にたまたま転がっていた空き缶を馬自身が踏んでしまった。急に響いた金属音に馬が驚き、90度ほど方向転換して右方向にいきなり疾走してしまった。その勢いで持っていた右手の手綱と右足元の鐙(あぶみ)は振り払われて、右半身が宙ぶらりんになってしまった。右の手綱と鐙をくねくねと探している間にも馬は全力疾走している。どのくらい時間がかかったか、やっとのことで手綱と鐙をセッティングして馬を止めることができた。あまりに突然の事で冷や汗も出なかった。あっけにとられていたドライバーさんと馬主さんが近づいてきて、にんまりと笑顔で親指を立てた。ガイドさんは私が疾走中になぜ助けに行かないのかと馬主さんに聞いたら、馬はとても敏感で走って行って近づいたら驚いてもっと危険になると答えたという。ガイドさんは泣いてしまった。馬主さんにしてみれば日常茶飯事。私たちは非日常の一大事。意識の壁です。けれども期せずして全力疾走の馬に乗れてワンチャンスエピソード。モンゴル一番のお土産になった。

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